酒のつまみは数あれど、とりわけポテトサラダをこよなく愛すマッキー牧元氏。「ポテサラ学会」の会長でもある氏が、ポテサラが旨いと評判の店に足を運び、その美味しさとビールとの相性を語る――。
■6年前に受けた衝撃の味
「6年くらい前に、ここのポテサラに出合ったのかな。当時、ただジャガイモと玉ネギ、キュウリ、ハムといったものでない、新しい形のポテサラが出始めた頃ではあったんだけど中でも斬新でね」と、マッキー氏に衝撃を与えたのが『高太郎』のポテサラだった。
「燻玉ポテトサラダ」800円。男爵とメークインの2種、具材には玉ネギとキュウリという定番を使用。味付けはごく軽めのマヨネーズと牛乳、辛子。これをベースとし、その上に2分間燻製にした半熟卵と、マスタードドレッシングがかかる。マスタードは加わるが、ベースは醤油と酢でできているため、和のテイストに仕上がっている。全てを混ぜ合わせて楽しむのが、『高太郎』流だ
メインとなるポテト、玉ネギ、キュウリという具材は目新しくはない。が、ホクホク感を出すための男爵と粘りを出すためのメークイン2種を混ぜ合わせる上、熱々のポテトとスライスした玉ネギ、キュウリを混ぜて熱を通すという手法。
卵はあえて半熟で燻製にし半個のせ、さらにマヨネーズはごく軽めで、マスタードを利かせた和風ドレッシングをかけ、これらをベースのポテトサラダと客自身が混ぜ合わせて完成させるというアイデア。
ちなみにゆで卵は色々試した上、沸騰後に投入し6分10秒茹でる。桜チップできっちり2分燻製にするというこだわりのものだ。
「元々、自分自身がポテサラが好きで他にない美味しさをと、辛子や牛乳を少し加えると酒に合うかもなんて、研究していくうちにこの味になったんです」と店主の林高太郎氏。
マッキー氏はといえば「いやぁ、やっぱり美味しいねえ」と『赤星』を飲みながら、ポテサラをパクパクと食べ進めている。
「でね、このポテサラは食べ方に流儀がある。まずはポテサラをふた口食べる。半熟卵を崩して、ポテトと絡め少し楽しむ。それぞれの味わいを堪能したら、ポテトサラダ、半熟卵、ドレッシングと、全部をよく混ぜ合わせて。卵のコク、ドレッシングの酸味が加わったその絶妙さを堪能する。混ぜる前は昼の光を感じるけど、混ぜ合わせると途端に夜の帳が降りてくる。2つの顔、味わいを楽しむ。これが正しい」
「僕としてはやはり混ぜ合わせて楽しんで欲しいんです。でも、そう説明する前に卵を全部食べちゃう人もいて(笑)。半熟卵の追加はできないので、完成した味を楽しんでもらえない悔しさも」(高太郎さん)
さて、こちら『高太郎』は日本酒を楽しませる居酒屋として有名で、ビールは『赤星』のみを置く。 「『赤星』のほろ苦味が好き。美味しいじゃないですか。日本酒を楽しみに来られても『赤星』があるのか! じゃあ、最初はこれを』と、必ず頼む方も結構いらっしゃいますよ」(高太郎さん)。 「そうだろうねえ。しかもね、すごく合うんですよ、特に全てを混ぜ合わせて薫香とコクと酸味が加わったポテサラと、『赤星』がね、本当にもうたまらなく絶品なわけ……」と、笑顔で実践してみせるマッキー氏。
■最後に例のアレで締める
ところで、ポテサラ酒場は今回で最終回となる。というわけで、最後のアレを……「本当に円満な家庭。なんだけど、燻製卵という魔性の女性に魅せられてしまい、翻弄されるお父さん。家庭に何の問題もないんだけど、週に数回、ふらりと彼女のいる店を訪れてしまう……が、ぴったりでしょ?」とマッキー氏。 燻製半熟卵のコクとまろやかさを、妖艶さに見立てるとは、お見それしました。ニヤリと笑うと、マッキー氏はその魔性の女性に翻弄されるお父さんを口にし、『赤星』をゴクリと飲んだのでありました。
■これも「赤星」に合います!
ひと県、ひと蔵。食事に合う日本酒。温度変化でいろんな味わいを楽しんでもらうをポリシーにしている『高太郎』。肴も日本酒との相性を考えたものが多いが、想像以上に『赤星』との相性もいい。 例えば写真の「鶏ササミ胡瓜 ごま浸し」650円。塩もみして叩いたキュウリとササミを、ゴマペーストと和ダシを混ぜたゴマだれに漬けただけ。日本酒はもちろんのこと、ゴマのコクとキュウリの爽快さと青っぽい味わいが、『赤星』のほろ苦みとぴったりなのだ。他に名物の「讃岐メンチカツ」(2個・800円)も実に『赤星』に合う。