酒のつまみは数あれど、とりわけポテトサラダをこよなく愛すマッキー牧元氏。「ポテサラ学会」の会長でもある氏が、ポテサラが旨いと評判の店に足を運び、その美味しさとビールとの相性を語る――。
■マッキーさんも感動の美しさ
ベーコンがゴロリとした迫力系、揚げたポテトを使ったあったか系、野菜ふんだんの文字どおりサラダ系……数々のポテサラを紹介してきたこのコーナーで、美しさは今回のものが一番かもしれない。
旬のジャガイモをなめらかにマッシュしたポテサラは中にマカロニが入っているだけの、白さが際立つシンプルなもの。その上には赤くきらめくイクラがたっぷりとかけられているのだ。白と赤のコントラスト、そして添えられたノリの濃緑が色合いを引き締めている。その美しさときたら!
「ほぉ、これはきれいだね。素晴らしい!」とマッキーさんの瞳もキラキラだ。
■ジャガイモをノリで巻く! 3つの食べ方に衝撃
今回、訪れたのは人形町にある『日本酒バル 炉端ぺし』。店名の通り、主に日本酒を出す店だが、「赤星」も多くのファンに楽しまれているという店だ。
「ウチは日本酒が多くあるので、肴の食材に魚介が多くあります。それを上手く生かせないかなと思ったのが、このポテサラの原点です。最初はイカやエビ、キュウリなどを加えたものを出していたんですが、どうも味のバランスがよくなくて(笑)。
何度か改良していくうちに、具材を加えるのではなくシンプルにしたほうがジャガイモとイクラの味が際立つことがわかり、今のぶっかけスタイルになりました」(店主・中村さん)
引き算でシンプルだとはいうが、マヨネーズは控えめにし、玉ネギのすり下ろしを加えた味噌ドレッシングで味を調えているという。
さっそく苦労の末、完成したポテサラをいただいてみる。
「ふむ……ポテサラだけ食べると味噌が少しふんわりと感じられる味わい。なのにイクラをジャガイモで包んで食べてみると、ポテトのほの甘い味の後にイクラの風味・塩味がふわっと口の中に広がって、これはいいね。不意に出てくるマカロニもお得感があってうれしいし。
そして、これ。ノリで包んでいただけば、おぉ、これは全く別物。ノリの持つ磯の香りとパリッとした歯触りがまた違った表情にしてくれる。面白い!」と大絶賛。
さらにここに『赤星』を飲めば、
「おぉぉ、なんてエレガント! ポテサラの味が華を持ち、実に上品になってしまうんだよ!『赤星』にほどよい苦味、香りがあるからこそ、そうさせるんだろうね」
「いやはや、これは美味しい」とノリで巻いてはパクパク、グビリで、ポテサラを残しついノリを食べきってしまう。
「大丈夫ですよ。ノリの追加は結構多くのお客さんからお願いされるので。最初から倍くださいなんて方もいますし(笑)」(中村さん)
追加のノリとともに、きれいにポテサラを食べ終わったところで、恒例のアレ。ポテサラをファミリーに例えていただきましょう。
「これはもう北海道でしょう。北海道にいる親戚の家に訪れてみたらその良さにびっくり。すっかりハマってしまった夫婦……あるいは、定年後にふたりで北海道に移住した夫婦とか。マカロニはそこにたまに遊びに来る孫。そんな感じでしょ」とニンマリ。
日本酒もいいけれど、“北海道を感じさせる『赤星』とポテサラのマリアージュ”を味わいに東京は人形町に出かけてみませんか。
■これも「赤星」に合います!
「魚だけじゃなく肉も用意していますよ。これなんかはビールがグイグイ進む味だと思います」と中村さんが出してくれたのは、豚肉料理。それも熟成豚と酒粕を使った「熟成豚の酒粕味噌漬け焼き」(1058円)だ。
味噌と酒粕の風味が熟成豚の甘みと心地よくからみ合い、さらに香ばしさも加わって、まさに「赤星」が進む味。
そしてもう一品は「スルメイカの陶板焼 肝ソース和え」(842円)。肝ソースと鮮度良いイカが陶板の上で熱せられ、口に含めば、イカの濃厚な風味が口いっぱいに広がる。もちろん、こちらも「赤星」が進まないわけがない。
また、陶板に残った肝ソースをリゾットにしてくれる裏メニューもあるそう。肝ソースを美味しいからと全部食べず、このリゾットも是非堪能してほしい。
構成:武内慎司
撮影:西﨑進也