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100軒マラソン File No.87

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

「三ちゃん食堂」

公開日:

今回取材に訪れたお店

三ちゃん食堂

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サッポロラガービール、愛称「赤星」が飲める店を訪ね歩く「赤星100軒マラソン」も87回目。これまで、実にさまざまな名店に出会って参りましたが、今回は、ちょっと、とっておきの一軒です。

年明け早々、雪でも降り出しそうな寒空の中、新丸子の名店、そう、「三ちゃん食堂」にお邪魔しました。飲み歩き食べ歩きの好きな方には、きっとお馴染みの店でもあることでしょう。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

さて、何から注文したものやら

ここは、食堂です。実に立派な、ザ・食堂。壁にびっしりと品書きの札が下がっている。店に入るとすぐ、それらが目に飛び込んできて、気分が一気に上がります。

ラーメン、ワンタン、ソース焼きそば、ワンタンメン、タンメン、サンマーメン、それから、おお! もやしそば。これこれ、これがなくては、などと思うときにはもう、何を注文したものやら、自分でもよくわからなくなっている。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

改めて眺めまわしてみると、中華がベースなんだなとわかる。若い頃ならラーメン、チャーハン、餃子にビールと迷わず頼めたけれど、昨今そこまで旺盛には食べられない。

けれど、ここなら安心。メニューには、銀ザケ、サバ、ホッケなどの焼き魚あり、サバは味噌煮も用意している。各種スープはもちろんのこと、シンプルなライスと味噌汁もあるわけだから、煮魚と漬け物でご飯と味噌汁、なんていう食事も楽しめるわけだ。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

書き遅れましたけれども、我ら赤星100軒マラソン隊はこのたび、昼の3時過ぎにお邪魔をしています。この界隈は新丸子駅も近いですが、もうひとつ武蔵小杉駅が近い。地元の人々に加え、近所の企業にお勤めの方々も多いわけです。だから昼時を避け、店が少し落ち着いているであろう時間帯を狙ってやってきたのです。

ところがどっこい、この時点でも、なかなかの混雑ぶり。単に食事をする方ももちろんいらっしゃいますが、どうやら、飲んでいる方のほうが多いようです。なにしろ、賑やか。あっちでも、こっちでも、皆さん思い思いに、楽しくやっていらっしゃる。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

それは、同じく飲みに来ている私たちにとっては望ましい状況。遠慮なしに、元気よく発声いたします。

「すいまっせーん! 赤星ください!」

昼下がりのハムエッグがたまらない

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

ホールの担当は、女将さんと、他に女性スタッフが3人。厨房には何人いるのか、私の座ったところからでは見えないけれども、料理の皿が次々に運ばれていくところを見れば、おそらく社長を含め3人くらいでフル回転しているのではないでしょうか。

さて、ビールが来れば、次なる注文はつまみだ。魅力的なメニューが多過ぎて、何を頼むか、本当に迷います。いや、嘘をつきました。実はこのとき、私は迷ってはいなかった。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

だから、どっちなんだよ! という話ですが、迷ってなかった。最初の一品は、店へ入ると同時に決まっていた。いや、店に入り、テーブルにつこうとコートを脱いだそのとき、私の頭に、ひとつの言葉が閃いたのだ。

ハムエッグ——。そう、みんな大好き、ハム&エッグです。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

私は、この手の大きな正統派の大衆食堂では、タンメン、もやしそば、五目そばなどが好みです。けれど、これから飲もうと言うときに温かい麺類をいただいてしまうと、腹が膨れて先が続かない。だから頼むとしても、それは後回しにするのが習わしなのです。

そしてハムエッグ。いつの頃からか、本格派の食堂にハムエッグの札を発見すれば、かなりの確率で注文するようになってしまった。この吸引力は、いったい何なのでしょうか。

あわせて頼んだのは、じゃがいも煮。メニューから、甘辛く煮たほくほくのジャガイモを想像しただけで、頼まずにいられなくなった。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

ほんのしばらくで、ハムエッグが、きました。おお、速いね、さすがだね、そうでなくては! と椅子を引き、背筋を伸ばす。ハムエッグに最敬礼してお迎えしようと思ったわけですが、ハムエッグの皿を持ったお姐さんは、なんと私の背後を素通りし、入口近くのテーブルの3人連れのテーブルへと運んだのだった。

私のハムエッグではなかった。落胆することしばし、調理場とホールとの会話に再びハムエッグのひと言を聞きとった私は、できるだけそちらに注目せず明後日のほうを向いてトボケていた。するといきなり背後から手がぬっと伸びてきて、

「はい、ハムエッグです」

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

おお! きたきた、今度こそ私のハムエッグ。

これだよ、これ。玉子がふたつ、ハムもどうやら四角いのが2枚敷かれている。

さっそく醤油をかけ、箸をつける。一気に半分ほどちぎって白飯にのせたい気分だが、今はビールだ。赤星をきゅーっとやる。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

いいねえ、昼下がりのハムエッグ。大宮の「いづみや」とか神戸三宮の「皆様食堂」で食べたハムエッグが記憶の底から蘇ってくる。

じゃがいも煮がまたシンプルでたいへんうまい。里芋の煮っころがしもいいが、じゃがいもも、うまいですよ。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

メンチカツで思い出す我が青春時代

本日は、例によって編集、撮影、営業、マーケ、広告とメンバーが勢ぞろいしております。本年最初の赤星100軒マラソン取材とあって、ビシッと勢ぞろいしたわけです。

ということは、私から見たら息子・娘世代の若者が3人もいますので、あれこれ注文しても残す心配はない。メニュー豊富な店でもありますが、飲む人は飲む人なりに、食べる人は食べる人なりに、あれこれ好きに注文しても、最後、分け合えばなんということはない。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

たとえばビールから日本酒に切り替えるとして、マグロやタコの刺身とか、カレイの煮魚などがあるし、ビールを続けたり、焼酎にスイッチしていく場合には、唐揚げや肉団子、春巻き、もつ煮込みなどもいい。

そして、我がスタッフは、こうだった。マカロニサラダ、揚げ出し豆腐、メンチカツ、焼売。いっぺんに頼むから、次から次へと料理が出て、テーブルの上はたちまちいっぱいになる。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

私は酒を飲むときはあまり盛大には食べられないクチなので、ちょこちょこと分けてもらうのだが、なぜだろう、自分ひとりだったら注文するかどうかわからないメンチカツに、最初に手が伸びた。好きなんですよねえ。メンチ。

私事でたいへん恐縮ですが、我が家では私の小さい頃から母が働きに出ていて、私と兄の食事については、あまり家事が得意ではなかった祖母が奮闘してくれていた。子供にお浸しと煮魚を出しても喜ばれないから、祖母は祖母なりにテレビの料理番組など見て勉強し、ばあちゃん、これうまいね、と言って孫が喜ぶ姿を自らの励みにしていたのだと思う。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

祖母は、コロッケは近所の肉屋がつくる近所で評判のものを買ってきたが、メンチカツやトンカツ、ハンバーグ、ポークソテー、鶏肉のカレー煮などは、自作した。私の50歳先輩だから、彼女が孫の食事づくりに奮闘した時期は、私の5歳から15歳までとして、彼女の55歳から65歳にあたる。私は今、ちょうど60歳だ。

ばあさん、頑張ってくれたなあ。新丸子の三ちゃん食堂で、2024年の1月に、不肖の孫はそんなことを考え、また一杯、赤星のグラスを空けるのである。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

素朴な味わいのマカサラに手を伸ばしながらメンチ話をもうひとつさせてもらうと、今度は私の高校時代。祖母の腰痛がひどくなって弁当を持参できなくなった頃、私は昼休みには学校を抜け出して食事に出かけた。そのうちの一軒に、女将さんひとりで切り盛りしている小料理屋があった。夜も遅くまでやっているのだろうに、ランチの定食も好評だった。

その定食のひとつがメンチだった。肉汁がじわりと流れ出す熱々のメンチカツとたっぷりのキャベツに、お新香と豚汁。丼のご飯がまた格別だった。私は16歳から17歳くらいだから、何を喰ってもうまかったわけだけれど、あのメンチ定食はすばらしかった。新年早々そんなことを思い出させてくれた三ちゃん食堂のメンチカツに、心から感謝したい。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

なんとも心休まる食堂酒

揚げ出し豆腐も、焼売も実にうまい。

私はビールからレモンサワーに切り替えて、さて次に何をつまもうかと思っていると、取材隊の一人がいつの間にか頼んだチャーハンが運ばれてきた。大盛りのチャーハンだ。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

お米ぱらぱら。見るからに抜群のチャーハン。最高だねと感想を述べていると、写真のSさんが言うには、厨房を取り仕切るこの店の大将は、チャーハンを作るところだけは撮らせてくれなかったという。

うむむむ。何か秘密があるのか。それともないのか。いずれにしても、あの小気味いい鍋捌きであっという間に逸品を仕上げる腕を、私は自らの舌で確かめるのみ。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

うまいねえ。ありがたい、という気もちにさせる優しいうまさだと思う。

ホッとしたいときには、一人でも二人でも、グループでも三ちゃん食堂をお勧めしたい。仕事の場ではひきつるくらいに緊張していたとしても、ここでしばらく飲み食いをするうちに、肩はほぐれ、気分はすっかり穏やかなものになるだろう。

正月早々、なんとも心休まる食堂酒だった。三ちゃん食堂様、どうもありがとうございました。本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

新丸子の「老舗大衆食堂」でやる昼下がりのハムエッグと赤星がたまらない

(※2024年1月11日取材)

取材・文:大竹 聡
撮影:須貝智行

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