こんにちは〜、倉本康子です。連日の猛暑続きで、いつも以上にビールが美味しいこの季節、みなさま赤星呑んでますか?
前回に引き続き今回も、私が愛して止まない広島からお届け致します。
今日のお店はこちら、「権兵衛」さん。
なんでも非常〜に歴史のあるお店なんだとか。この建物の感じもいいし、緑提灯で地場産品応援の店。地元の食品や産業を応援するというの、いいですよね。これは飲んで応援したくなります。
わぁ、長ーいカウンターがあって……、見て! 美味しそうなおでん!
なんでも西のほうでは「暑い時こそおでん」という習慣があるんだとか……!? その理由はあとで伺ってみますね。
「カンパーイ」
すでに店内にいらっしゃるお客様の素敵な声も聞こえてきます。では私も早速★
出ました、星印のこのグラス! 以前教わったとおり、星の肩の部分まで泡がくるのがベストバランス。果たして今日はうまく注げるか?
やりました!どう、この泡バランス、完璧じゃないですか!?
それでは、カンパーイ!
ふはぁ、何口目でも美味しいけれど、ひと口目はやっぱり最高! さてさて。
「大将、おすすめはなんですか?」
「そうですね。博多ネギ、トマト、ホタルイカ……。タケノコ、新タマネギ、もずく……」
えっ⁉️ トマト? タケノコ? もずく? どれもおでんの具として普段思い浮かべないものばかり。
「よろしかったら、こちらをご覧ください」
これは、とっても綺麗で見やすいし、わかりやすい! 待ち受けにしたくなっちゃう(笑)。
「ちなみに一番人気は?」
「やっぱり大根ですね。それから、女性ですとエビ団子とか……」
大根! おでんに絶対に外せないですよね〜。
「それでは大根とエビ団子をお願いします」
「お待たせいたしました。お好みでからしみそをつけてお召し上がりください」
うん♡ ピリ辛のみそダレが、染みっ染みのお大根にめちゃくちゃアクセントになる。この大根は、ガチで歯がいらない、もはや“おでん大根ジュース”!
エビ団子は、想像していたよりもフワッフワで美味しーい。
西のおだしって甘いんですよね。甘味旨味が強くって、関東のおでんと全然違う。そしてこのみそダレがまた絶品!
「このみそダレ、美味しいですね。レシピは内緒なんですよね」
「いえ、普通に府中みそと砂糖だけです。あとうちのダシが入っているだけで……。初代が京都で修行されとって、京都で自分が使っとったみそに一番近いのが(広島県)府中市のみそだったようで、それで府中のみそを使い始めたと聞いています。府中とココだと広島の端と端で遠いんですが、いつも送ってもらっています」
初代がこだわった味のみそっていうことですね。それにしても、おでんにみそって珍しい気がするんですが……。
「実は、おでんってもともとおみそをつけて食べるものなんです。それを田楽と言っていたんですが、女性はお田楽って言っていて。そこから次第におでんという名前になったそうです」
そうなんですか!? それは知りませんでした!
「さっきのメニューの裏には、みそおでんのメニューがありますよ」
わっ、ほんとだ。
ええと、「やおぎも・とりかわ・なすび・ぶたみみ・うなぎはみそおでんのみのネタとなります。その他のネタは、だし、みそのどちらでもお召し上がりいただけます」ですって。
うなぎって珍しいし、なすびとかも見たことないですよね。
ちなみに、「やおぎも」ってわかります?「やおい」きもですね。「やおい」って広島弁で「やわらかい」っていう意味なんですよ。
「『やおぎも』は『フワ』ですね。牛のホルモン、肺の部位になります」
それにしてもカウンターの向こうに並んでいる短冊、板が絶妙な色合いに変化していて……歴史を感じます。
「この短冊は創業当時からのものなんですか?」
「こちらは40年くらい前からになります。お店自体は、創業から98年で、自分で4代目です」
「98年!それはすごい!場所はずっとこちらなんですか?」
「原爆の前は、西の遊郭の中、いまの中国新聞の裏手のあたりにあったらしいです。でも焼け野原になってしまいましたからね……。あちこち転々としたのちに、こちらのほうに落ち着きました」
「その当時からおでんだったんですか?」
「元は割烹料理がメインだったんです。おでんは冷蔵庫がない時代の突き出し(お通し)みたいなもので、おでんを食べながら料理を待っていたみたいなんですね。そのうち、探究心が旺盛な初代がいろいろなものをおでんに入れていき、次第におでんがメインになっていきました」
まさかの、スタートは割烹料理! そこからおでんへの転身、興味深いです。
「ちなみに、昔はクーラーがなかったので、“暑いときには熱いモノを食べに来る”っていうのがあったそうです。九州では、炭鉱のそばなんかにおでん屋さんがあったみたいですね。栄養分、水分、塩分がいっぺんにとれるんで。冷たいものを食べると次の日炭鉱の中でバテるらしいんですけど、熱いものを食べるとバテないそうです。今でも九州のほうでは、暑い時期におでんを食べる文化があるみたいです」
へぇ、そうなんだ! 知らなかった……。勉強になります!
「ただ広島は逆らしいです。暑いときに冷たいもの食べて、寒い時には熱いもの食べる。熱しやすく冷めやすいっていうのが、広島人の体の中に根本的にあるみたいで」
「あ、それはわかります。流行った時にはみんな一緒に一斉に行くんですけど、一気に廃れたら誰も見向きもしない。カープが強いとみんなで球場に押しかけるけれど、弱いと全然行かなくなるっていう(笑)。私も血は100%広島なので、そんなに悪くは言いたくないですけれど、そういうところありますよね(笑)」
「大将は4代目になられて何年ですか?」
「十何年になりますね。この店に入ってからは18年です」
「だからでしょうか。動きが素晴らしいですよね。本当にマスタークラス、みたいな」
「ありがとうございます!。ちなみにうちの店は、50年以上サッポロさんを使わせてもらっとるんで、表彰状をいただいています。前の社長さんも、顧問になられてから食べに来てくださいました」
それはすごい! この長い歴史にあぐらをかくことなく、日々ご努力されているから、こういう良い店がずっと続いているわけですね。
「みそおでんも頼んでいいですか? やおぎもとうなぎをお願いします」
うなぎ、バーナーであぶるんだ! さらにゴマをふりかけて……うわぁ、いい香り〜。
これはね、食べたことがない! バリうまいです。広島風に言うと「ぶち美味い!」皮目のところを焦がしてるから、パリッと感と香ばしさが際立って、身はふくふく〜。
おでんのだしの染みたうなぎに、このみそが本当に良いの。さっきはつけだれになっていたみそと同じってことですよね!これすごい!
やおぎもは……ん! たしかにフワ! ふわっふわです。
ちょっと奥さんやばいわよ、これ。タマランチ会長よ(笑)! 権兵衛さんのみそおでん、絶対食べた方がいい。このおでんと赤星合わせたら、良い夢見られそうです(笑)。
「お待たせしました。博多ネギです。みそとカラシを溶いて、つけて食べてみてください」
博多ネギとはっ! こういう細ネギのおでんは初めて。
これまた美味しい。食感がまず良いし、このおだしからの〜おでんからの〜このみそ、そして赤星で完成ですね!
何食べてもそりゃ美味しいはず。だって全部ベースが美味しいんだもん! おでんだけでこんなに堪能できて幸せな気持ちになれるって、すごい奥が深い!
赤星との相性も最高で……。暑い時期はつい、さっぱりしたものに走りがちだけれど、暑い時期のおでん、いいですね。元気が出る気がします。
ぜひみなさんも広島にきたら、「権兵衛」さんのおでん、堪能してくださいね。きっとおでんの概念が変わることと思います。
私もまた来ますね〜♪ 本日はごちそうさまでした!
「権兵衛」さん直伝
「博多ネギのおでん」の作り方
①博多ネギは15㎝程度にカットしておく。
②ひとつかみくらい取って、葉の部分と白ネギと交互になるようにまとめて、かんぴょうで結ぶ。
③お湯を沸かし、束ねた博多ネギをくぐらせる。お店ではなんと酒燗器を利用!「酒燗器のこういう使い方、初めて見ました!」と倉本さんもびっくり。
④箸で持ってくたっとなるくらいまでやわらかくゆでたら、おだしのなかへいれて、全体におだしがいきわたるようにくぐらせます。
⑤大きめのお皿に盛り、ネギを食べやすい大きさにカット(一緒にかんぴょうもカット)したら、おだしをたっぷりと注いで完成。
動画・写真撮影:大坪尚人
動画編集:上田甲人
構成・文:立原由華里