むさこといえば、俺にとっては武蔵小山だ。武蔵小杉ではない。五反田生まれの俺にはガキの頃から馴染みのある街だ。小学生の頃初めてジーンズを買ったのもむさこの商店街だった。そんなむさこの奥に、えび冷やし中華が絶品の町中華があると聞き、むさこ散歩してみる。
ひたすら奥むさこを目指して長すぎる商店街を歩く。
真冬の散歩に欠かせない相棒はヴィンテージのコルビジェジャケットだ。
フランスのブラックウォッチパンツにアメリカのレッド・ウィングポストマンがしっくりくる。
グッとくる町中華らしいメニューから奥むさこグルーヴが出まくっている中華料理とき。えび冷やし中華は夏季限定となっているが、あまりの人気メニューのため今は通年メニューとなっているのだ。
色褪せた赤いカウンターで昼間からルービーがたまらない。
もう一度店内でメニューを確認してみると、えみこのやっこが気になってきた。
えみこさんは接客を担当しているこの女性なのか?
拓也のよだれ鶏も気になるぞ。
厨房に立っているこの男性に間違いない。
考えるな、感じろ! ということで、えみこのやっこ! インスタ映えを超越した渋いルックスが逆に映える。シンプルでウマいっす、えみこさん!
拓也のよだれ鶏もウマすぎる。これはかなりの本格的な町中華だ。油断できない。
昼間のテレビを見ながら赤星って最&高すぎる。
やっぱり町中華ではギョーはマストでしょ。
濃いめの餡にパリッと皮が俺好みのギョーだ。ギョービーがとまらない。
えび冷やし中華のTシャツにグッときた瞬間に、奥むさこグルーヴがついに頂点へ。
美しすぎるぞ。今まで見てきた冷やし中華とは別物ではないか。
強烈にウマすぎる! デカすぎるカリッと揚げられたえびがプリッと俺の中でスパークした。真冬でも冷やし中華はウマいと確信した。これは夏季限定ではもったいない絶品だ。常識を当たり前と思わず己の考えで変えていくことが大事なのだ。俺は、ときにロック魂を感じた。
とその時、何か強烈なむさこグルーヴの視線を横から感じた。
むさこパイセンの小西さんではないか! 膨大な酒場情報を持ち、俺にとっての酒場大先輩でもある。ソーシャルディスタンスで乾杯だ。ちなみに小西さんは赤星探偵団の赤星を語る会のメンバーでもある。
あまりにえびがウマすぎたので、えびチャーハンも食べてみると。
えびアゲイン! チャーもパねえ。完全に町中華の向こう側で奥むさこ気絶。チャービーがとまらない。
気絶から目が覚めるとカウンターはほぼ満席になっていた。
厨房に立つ拓也さんと接客のえみこさんにお話を伺ってみた。ときの今は亡き先代はあの有名な銀座の老舗中華で修行し昭和43年に店を構えた。今は妻のよし子さんがその味を引き継ぎ、拓也さんとえみこさんがサポートしている。なんかグッときて心が熱くなった。昭和43年といえば俺が生まれた年だし運命も感じる。
時代が変わってもむさこの人々を魅了してやまないえび冷やし中華は真冬でも一年中食べることができる奥むさこの定番食なのだ。「冷やし中華はじめました」ではなく「冷やし中華いつでも食べれます」とこのTシャツが俺に語っているような気がした。昨日までの非常識は今日の常識。俺もそんな時のようにロックに生きていきたい。
Text:Eiji Katano
Photo:Shimpei Suzuki