白いブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツに普通のチノパン。これこそシンプルの極み。シャツをパンツの中にインする、男くさいスタイルがいいのだ。ベルトをギュッとしめて腰履きせず、気分は「幸せの黄色いハンカチ」の高倉健さん! ってとこで今回は、俺が愛する街、高円寺へ向かうことに……。
ここは大衆酒場と古着屋が多く、アニ散歩の宝庫でもある。つまりアニ聖地ということ。
足元は何年も履き続けている相棒、レッド・ウィングのポストマンだ。魔法のように歩きやすいこいつは散歩には欠かせない。
早速、古着屋を何件かチェックしていたら喉が乾いてきたぞ。早くルービーが飲みたい。
駅前の商店街をひたすら散歩してみる。この先に俺が求める「赤星」があるのだ。
ここで一休みすることに。おっ、ちょうどエイジングされた暖簾がかけられるグッとくる瞬間。
昭和が染み込んだ長いカウンターも悪くない。良い酒場には、何かグルーブというかオーラが出ているものだ。
おっ!生も悪くないが、今俺が無性に飲みたいのは瓶ビールの「赤星」だ。
なるほど、「やきとり」とひらがなで暖簾にあったのは豚と鳥の両方あるからなのか?100円ってのも気絶価格だ。さてさて、どれにするかな?
しかし、さっきからこいつが気になって仕方ない。まるでスウィーツのようにプリティなルックス。決めた!今日はこの創作串にしてみよう。
店先の小さなカウンターで最&高な瞬間。夕方ルービーが俺を癒す。相変わらず「赤星」がウマすぎる。
高円寺の風が気持ち良すぎだし、今の季節はやっぱり外飲みだなあ〜
厨房では女将さんが丁寧な仕事をしている。なんて雰囲気のある方なんだろう。
まずは厚揚げスペシャル!山芋とウズラの玉子でスペシャルってことか?スイナーなネーミングだ!
ウマい!スペシャルウマい!窓ガラス越しの女将さんに俺の気持ちは伝わっているだろうか?焼き場がカウンターの前で距離が近いためこの窓が開く事はないのだ。
目の前で創作串が焼かれている光景だけでもツマミになる。
キター!トマト巻!プチトマトをベーコンで巻いたこのポピュラーな創作串はここ「やきとり屯」が発祥と言われている。
強烈にウマい!トマト気絶……。元祖昇天!さすがオリジナルだけあって今までいろんな店でトマト巻を食べてきたが、比較にならない次元だ。
豚のカシラとニンニクのスタミナ焼きもウマすぎる。焼き加減も絶妙でルービーが進むぞ、こりゃあ。
しめじとチーズを豚バラで巻いたチーズ巻もたまらない。カリッときた後にとろけていく感じ。まだまだ創作串はつづく。
「赤星」をもう一本お代わりして女将さんを見つめる。
強烈なオーラと窓ガラス越しということもあり、話しかける事が出来ない。今は寡黙に焼き続ける姿をリスペクトするしかないのだ。
なんて美しんだ、とんばらしそ巻!豚バラとしそが巻き巻きされてロール気絶。ファンタジー串でウマすぎ!
創作串を堪能した〆の串はシンプルな牛串。わさび醤油のタレ味で一口食べてみると極上な味わいが炸裂。ここまでウマいと、もう言葉が出てこない。
写真嫌いで無口な女将さん。しかしなんで屯なのか?それは店主が北海道出身ということもあり、北海道の開拓に従事した屯田兵の精神を志すという意味らしい。さらに人が集まる場を屯集、屯在、屯所と呼び、豚がトンなので語呂合わせでもある。今は数キロの商いだが、目標は1トンの商いに育てたい野心があり、お客様の運勢がトントン拍子の末広がりになりますようにと願いも込められているのだ。深すぎる意味だけでなく、笑ってしまうダジャレ感に屯でもなくグッときた。
さてと「やきとり屯」にはわかる人にはわかる名物がある。気になる方はぜひ「女学生の友」をトライしていただきたい。
ほろ酔いでいい気分になっていると、いつの間にか一人飲みの女性がいるじゃないか。しかも瓶ビールの「赤星」を飲むなんて素敵すぎる。どこかで会ったような気がする横顔。
気軽に声をかけるのはやめておこう。自分のペースで飲めるのが一人飲みの醍醐味だから。さてと、どうしても気になる古着があるので高円寺をもう少し散歩してみるかな。
レッド・ウィングのポストマン。ブーツで有名な歴史あるブランドの隠れた名品だ。かつて全米の郵便配達員のオフィシャルシューズとして使用されていた。フラットなラバーソールは歩きやすい上にドレスシューズのようにも見える美しいシェイプはカジュアルからビジネスまでヘビロテ間違いなしの一足と言える。
Text:Eiji Katano
Photo:Shinpei Suzuki