ガキの頃に初めて買ったスニーカーはコンバースだった。ハイテクスニーカーにはない、どこかホッとさせるローテクなこいつは大人になっても永遠の定番だ。履き慣れた相棒と押上に向かう。
スカイツリーがそびえ立ち、すっかり観光地になってしまった押上にも、駅から少し歩けばまだ昭和が残っている。
足元のハイカットには「青星」。こいつを履いて「赤星」を飲みダブル星でキメる。靴紐はグルっと一周回して結んでくれ。
白いスニーカーにはネイビーのラコステとのセントジェームスを重ね着するのが何年も変わらないマイ・スタンダード。
目の前で電車が通り過ぎ踏切の音が鳴り響く中、押上の夕日が照らす「もつ焼き 野田」の暖簾をくぐる。
いきなりクレイジーケンバンド(以下CKB)の横山剣さんのポスターが!しかもBGMもCKBがかかっている。これはヤバい!強烈なSOUL電波を感じるぜ。
こち亀の両さんまでイイネ!しているぞ。落ち着け俺、剣さんのように興奮してもクールに決めるのだ。
カウンターに座ると、OTONとOKANが!なんてイカしたTシャツなんだ!お二人は店主の野田さんご夫婦で、わかっちゃいたけどCKBの大ファンとのこと。
さらにカメラマンと野田さんの地元が同じ浅草で「どこ中?」とか、飲む前からミラクルすぎるトーク。取材撮影を忘れリアル散歩になりそうな予感を感じつつ、まずはいつもの「赤星」を注ぐ。
タイガー&ドラゴンを聞きながら、喉にしみる一杯をグイッと。俺の俺の俺の「赤星」が美味イイ〜ネ♪
まずは、すぐ出るガツ刺しをつまむと、強烈に美味い!鮮度と食感がヤバい。こりゃあ、クオリティがハンパないっすダンナ。
もつ焼きはどれにするか?迷うことなく野田さんセレクト5本に決めた。俺と野田さんのイイネ!連発が止まらない。
トークで盛り上がりながらも、さすが職人だ。見事な手さばきで丁寧に焼かれる俺のモツ。ここのスタイルは高級焼き鳥店のように、1本づつ出される。食べる順番と味付けが考えられたもつ焼きなのだ。
1本目は、カシラの塩。美味すぎる!今まで食べたことない強烈な衝撃が体中を駆け巡り思わず気絶しながら、もつツイストを踊りそうになっちまう。
2本目は、タン下の塩。これは裏メニューでその日の仕入れで数量限定の貴重なものが出されるスペシャルだ。美味さに言葉が出ない。もうこれはもつ焼きではない。いやこれが本当のもつ焼きなのか?
すでにモウレツな2本で気絶したまま寝てしまった……。
寝起きの3本目はレバーを食らう。タレでも塩でもなく、醤油なのだ。シンプルに醤油ってのが、新鮮なレバーの美味みを際立たせている。
ここで先日のCKB横浜赤レンガLIVEで、なんと野田さん夫婦と俺はすぐ近くのエリアで見ていた事実が発覚した。あの夜にハマ風を感じながら同じ空の下でアンコールの名曲ガールフレンドを聞いていたなんて、この出会いは「赤星」による運命なのだろう。
4本目はハラミのおろしポン酢醤油だ。まるでCKBのLIVE構成のように、ふざけているようで完璧に計算された順番だ。さっぱりしながらもしっかりとしたハラミの美味みにグッときた。何度も言うが強烈に美味い。
BGMはCKBの名曲、横顔がかかっている。とその時、カウンターの奥にどこかで見たような横顔が・・・・・。女性一人、もつ焼きで「赤星」を飲むなんて素敵すぎるぜ。しかし俺には、最後のもつ焼きが待っている。話しかけず、横分け単独行動プレイボーイでいくぜ。
5本目はテッポウのたれ。もう見ただけでヤバいやつ。セクシーすぎる。ラストを飾るにふさわしい2本串もたまらない。
やられた。完全にやられた。一口食べると強烈な美味さを残し一瞬でとろけ消えちまった。気絶したまま心の中でイイネ!イイネ!イイーーーーーーネ!!まるでうなぎの蒲焼のような上品なたれと柔らかトロトロで鮮度抜群のテッポウが絡み合い、俺の中で俺と俺が昇天!
完璧な野田さんセレクト5本に俺はシビれまくった。しかしまだ終わっていない。LIVEにはアンコールがあるもの。ドーン、〆のタレかけご飯!ウマウマウー!©小野瀬雅生(CKBの名ギタリストのっさん)。
すっかり日が暮れて窓越しのスカイツリーが、巨大化したマリンタワーのように感じる。相変わらずBGMはCKBが鳴り響いている。
野田さん夫婦の人柄にも、すっかり心から酔わせていただいた。毎日仕入れる鮮度の高い食材を職人技で絶妙に焼き、素材に合った味付けにする。そしてトークで盛り上げ笑わせてくれるゴキゲンなお二人に心からイイネ!イイネ!イイネ!ィイーーーネ!
コンバースのハイカット。これは数年前にユナイテッドアローズの別注で復刻されたチャックテイラーモデル。つま先のラバー部分が小さく、サイドに当て布ステッチの入った細めのラストでヴィンテージのディティール満載だ。
Text:Eiji Katano
Photo:Shinpei Suzuki