小学生の頃、洋服に興味を持ったきっかけは兄貴が着ていたブルックス ブラザーズだった。俺はアニキと呼ばれているが……、実は8歳年上の兄貴がいるのだ(笑)

トレードマークのゴールデンフリースが何匹もいるネイビーのネクタイは80年代に買ったもの。今でも大切に愛用している。

今となってはMADE IN USAの貴重な一本だ。なぜかこのブランドを身につけると心が引き締まり、背筋がシャキッとする。そんなマイ・スタンダードでサラリーマンの聖地へ向かうことにした。

アニ立ちしてメーテルを待ってみることに。しかしここは新橋なので車掌も鉄郎もいない。ギャラクシーへジャーニーできないのか?

サラリーマンのパラダイス、ニュー新橋ビルへ「さあ行くんだ〜♪」とゴダイゴを口ずさみ進めばいい。

戦後の新橋には闇市が広がっていた。日本最大規模だったマーケットは昭和46年にビルとして再開発された。この地下街からは、活気ある戦後のグルーブが今も俺にはビンビン伝わってくるのだ。

昭和喫茶にゲームセンターが連なり、完全に時が止まっている。あ〜インベーダーで名古屋打ちしたい。

ついつい散歩中に寄りたくなる目玉焼きのせ。甘く危険な誘惑を振り切り、「赤星」を探す。

キター!通路の店壁面に貼られたグッとくる手書きスタイル。こりゃあ間違いない。俺の「赤星」アンテナが反応しまくる。定食とつまみ、どっちも好き!

暖簾の脱力感がハンパない。「ニュー」って響きが昭和電波を発している。元は「ニコニコ」というお店だったのか?歴史が動いた瞬間があるはず。

おっ!冷水式でキンキンなこいつ。見つけちまった。

まだ平日の昼過ぎなのにお店はほぼ満席。俺が俺を取り戻す最&高な瞬間だ。

シビれる。なぜに新橋で飲むこいつは強烈にウマいのだろうか?何かが俺の中でスパークした。新橋と「赤星」・・・・これは何かとんでもない事がこの夏始まる予感がする。

店内は見事なほどにオヤジしかいない。さてと、つまみは何にするか?

すぐ出る煮込みでしょ。一発目はまずこれね。うっうっ・・・・・・マジでウマい!濃厚で柔らかい牛もつ、これでライス100杯はいける。ちなみに11:30から営業しているので仕事中に牛煮込み定食で新橋ランチも可能だ。

上まぐろ中おちも絶品。昼星★万歳!

串カツも忘れてはいけない。昼からこんなに充実したつまみで飲めるなんて幸せすぎる。

強烈にウマい!カリカリ衣にジューシー肉でニュー気絶!

焼き魚定食が人気と聞いたので、サバを注文してみる。あれ?厨房で焼かないの?

なんと焼き場は通路側の店先にあるのだ。女将さんが笑顔で焼いてくれる。浅草の福ちゃんスタイルじゃないか!ちなみにこちら。
https://www.akaboshi-tanteidan.com/forza/anisanpo/anisanpo-no6/

脂がのりまくりで、これヤバイやつでしょ。食べる前からご飯が欲しくなってきたが、まだ早い。自分の限界までご飯を焦らすのだ。

つまみの時は七味をかけるのがマイスタイル。「赤星」に合うんだなあこれが!いやあウマすぎる〜女将さんニュー気絶!

オヤジ限定のライブハウスのような熱気とグルーブがゴイスーすぎる異空間。激動の昭和を生き抜いた大先輩に乾杯。

いつ再開発で消滅するかわからないニュー新橋ビルには、やはり瓶ビールのこいつが似合う。

〆は明太子のちょい焼き。女将さんが愛情込めて焼いてくれる。

ウマすぎる!一口食べた3秒後にもう我慢できず、「女将さん、半ライスください!」・・・・・ニューちょい気絶!

常連のレジェンドおやじに優しく話しかけるニコニコな女将さん。

さすがレジェンド!キンミヤは一升瓶でボトルキープスタイルだ。俺にも優しく話しかけてくれたおやじさん、ありがとうございました。

「ニューニコニコ」は、まだここが闇市だった昭和22年に女将さんのおじさんが「ニコニコ」として創業した。昭和46年に再開発でニュー新橋ビルとなり、「ニューニコニコ」となったのだ。やはりニューには戦後の歴史があった。
創業当時からサッポロビール一筋で今は、息子さんとお店を続けている。今は亡き夫とおじさんは、とにかく「赤星」が好きだったとのこと。闇市時代から通い続けてくれる80歳のおじいちゃんの他に何十年も飲みにくる常連達ばかりだ。79歳の女将さんは、そんな常連さんたちとお店で話せるのが健康の秘訣だと。どんな時も、いつもニコニコ笑っている方がいいとおじさんがつけた店名。
シンプルだけどグッときたよ、女将さん。
心までニコニコになったのでもう少しニュー新橋ビルをニュー散歩してみるかな。

ブルックス ブラザーズのネクタイ。80年代のもので確か青山のお店でビビりながら買った思い出がある。当時のMADE IN USAは今では自然とビンテージになってしまった。創業200年を迎え、さらに進化する老舗には古き良き時代のディティールを感じさせながらもモダンにアップデートされたアイテムが揃っている。
Text:Eiji Katano
Photo:Kou Mizawa
