小学生の頃、雑誌でアイビーに衝撃を受けたことがファッションに興味を持つきっかけだった。たまらなくカッコ良く見え、すぐに真似をしてショーツを履いた。でも、ただの短パン小僧にしか見えなかった。
渋谷の道玄坂裏の「ミウラ&サンズ」に憧れるも本物は買えず……。10代後半にはDCブランドにかぶれ、大人になりベーシックな服に逆戻りした。パッチワークのショーツには、特別な思い入れがあるのだ。
洗いざらしのシンプルなボタンダウンシャツには、素足にローファーがしっくりくる。普通でいいのだ、普通で。ナウでヤングな渋谷の昭和スポットで大人の短パン昼飲みしてみることに。
再開発が進む渋谷のマークシティ裏で、モクモクと焼き鳥の煙を巻き上げる名店の「鳥竹」。この辺りは昼飲みできる昭和酒場が奇跡的に残っていて今となっては希少なスポットだ。
グランデかすぎる!ここの焼き鳥は強烈にビッグだ。1本300円なので一般的な焼き鳥の2倍はあるボリュームだ。
渋谷のど真ん中でエンドレスに焼き続けられる大串。
焼き鳥屋だが、お弁当もあり多くの人がテイクアウトしていく。ランチの定食もボリュームがあり大人気だ。
1階のカウンターもなかなか趣があるが、2階に上がってみよう。
焼き鳥は大串なので1人飲みだと4本くらいにして、お腹を空かせ、〆はチキンライスと決めている。今日は鳥以外食べない。
昼下がりの渋谷で注ぐ「赤星」が、俺を俺に取り戻す時。冷房の効きまくった2階から、井の頭線の改札を眺めつつ至福の冷えた一杯をクィーーーーッと……美味すぎる!
ボンボチと首肉は塩で、ワサビをちょいつけ、串から外さずにダイレクトに食らうべし。
手に持つと、やはりでかい。焼き鳥というよりはダイナミックなチキンバーベキューだ。このサイズだからこそ美味い肉感にシビれる。
皮とレバーは、いつもタレと決めている。えっこれが本当に皮なのか?と疑ってしまう衝撃の分厚いジューシー皮。レバーも食べ応えがあり、さすが鳥を知り尽くした老舗のグランデ焼き鳥だ。
〆のチキンライスの前に「鳥竹」でかかせない唐揚げを注文。焼き鳥屋なのに、かわいらしいバスケットがなんとも愛おしい。
カーネル・サンダースにも食べていただきたいカリカリに揚げられた絶品だ。
チキンジューシー炸裂で、これまた強烈に美味い!気分もアゲアゲだ!
極上の鳥メニューで「赤星」を流し込み、そろそろ〆のチキンライスをラストオーダーする。
喫茶店でも洋食屋でもない焼き鳥屋のこいつがグッとくる。さっきまで焼き鳥と唐揚げに夢中だったが、最後はやっぱりお前しかいない。
ヤバい。ヤバすぎる。マジで強烈に美味い。アニ気絶……チキン君臨!シンプルな具だからこそ難しいこの意外なメニューにも老舗焼き鳥屋の実力を感じる。
ここには渋谷とは思えない昭和な時が流れている。ガキの頃に通った東急文化会館のプラネタリウムも渋谷東急東横店屋上の遊園地も今はもう無い。
俺は店を出て歩きながらふと思い出した。このチキンライスは、あの頃におかんが食べさせてくれたお子様ランチの味だと……(涙)。再開発の工事の騒音が渋谷にせつなく鳴り響いていた。
J.CREWのパッチワークショーツは夏にかかせないワードローブ。この季節になると履くだけで気分を上げてくれる。履きこむほどに色落ちして馴染んでいく経年変化も楽しめる逸品。
Text:Eiji Katano
Photo:Kou Maizawa