「寒い夜だから~♪」って本当に寒すぎる今日この頃。外での立呑み好きとしては、あったかいアウターがマストアイテムだ。このジャケットは米海兵隊の寒冷地用でアウトドアブランドのワイルドシングスが製造している。ダウンではなくプリマロフトという素材で軽量かつめちゃくちゃ保温性に優れているミリタリー×アウトドアの最強スペック軍モノだ。
ヴィンテージではなく2009年の軍放出品なので比較的新しい。シンプルなデザインとコヨーテと呼ばれる絶妙な色味が気に入っている。
そんな外立呑みスタイルで向かったのは、溝の口の駅裏。昭和遺産、溝の口駅西口商店街だ。ここは戦後の闇市の名残が残っていて、再開発された駅前と同じ街と思えない昭和が残っている。看板は新しくなり、入り口手前にあった露店のようなお店は諸事情があり立ち退いてしまったようだ。
商店街の中は、昔のまま。大衆酒場の他に古本屋や八百屋があり、まさに戦後の昭和にタイムスリップできる。
平日の夕方4時なのに、すでに盛り上がっている昭和遺産酒場の「かとりや」で一杯ひっかけることに。
まずは「赤星」を注文。創業50年の老舗オーラがハンパない。
夕方ルービーが美味すぎる。リアル昭和な路上で飲む「赤星」は、なんでこんなに美味いのだろうか。立呑み最高!!
外メニューの串焼きは、なんと1本、90円だ。飲み物はビールと酒しかない潔さもグッとくる。外の立呑みエリアと中の座りエリアがありメニューも若干異なる。俺はいつも外と決めている。
ちなみに中は、丸椅子のカウンターで串焼きは5本セットのみ。単品の注文はできない。レモンサワーや煮込みなどのメニューも充実していて夕方5時からの営業だ。
シロタレを3本注文。寡黙なご主人の焼き姿に惚れ惚れしてしまう。
備長炭で焼かれる俺のシロタレ。
濃い目のタレは継ぎ足しで昭和の歴史を感じさせる。
俺が愛してやまないシロタレ気絶串キター!!
ヤバい。ヤバい。ヤバい。気絶&気絶&気絶。3度は気絶してしまう強烈な美味さ。
厚揚げ串は大量のネギと一緒に食べると、これまた「赤星」が進む。
立呑みエリアは、割り箸が置いていないので、食べ終わった串を箸代わりにして食べるのがここのルールだ。
「ゴゴゴーーッ」と目の前を走る南武線の音も心地良い。
串焼きは豚ホルモンがメインだが、なんと牛もあるのだ。この牛串もかなりの絶品。
美味すぎてラストにまた気絶……。
カウンター立呑みは他のお客様と距離が近く、ついつい仲良くなってしまう。飲みものがビールとお酒しかないので、「赤星」の後におすすめの冷酒を飲んでみることに。
ちなみに熱燗はないストイックなスタイル。この輪ゴムは、酔って自分の酒と人の酒を間違えないよう目印となっている。一杯260円って……。安すぎる。
いやあ~たまらん。これは飲みすぎて自分の酒がわからなくなる危険ゾーンに要注意。
20年ぶりに「かとりや」に来たという隣のお客様と会話が弾む。今もこの商店街と「かとりや」が健在で安心したとのこと。
終戦直後の混乱時期に誕生した闇市は非合法のマーケットだ。バラック小屋が並び、配給品では手に入らない日用品が売られていた。どんなに辛くてもたくましく生きるしかなかったタフな時代の闇市に、なぜか俺は心惹かれる。
そんな昭和を感じさせてくれる「かとりや」で呑むと義理と人情、そして人とのふれあいという今の社会で忘れかけてしまいそうな大切なものを気づかせてくれる。
米海兵隊仕様の軍モノで、初期型のラベルについていたスマイルマークからハッピージャケットとかハッピースーツと古着業界では呼ばれている。ダウン並みの保温力があり、根気よく探せば古着屋で3万~4万で手に入る。
Text:Eiji Katano
Photo:Kou Maizawa