横浜と同じく俺が愛してやまない街が横須賀だ。ィヨコハマ、ィヨコスカと気分はリスペクトするクレイジーケンバンドの横山剣さんってことで、横須賀中央駅近くのディープスポットを昼下がりにブラブラしてみる。
戦後の闇市から発展した若松マーケットは今では多くのスナックや飲食店が連なっている。まるで昭和な映画のセットのようだ。しかし俺が目指すのはここではない。男の立ち呑みへ向かうのだ。
駅から少し歩くと「酒のデパート ヒトモト」という横須賀で130年続く老舗の酒屋がある。その横に立ち呑みカウンターがあるのだ。つまり角打ちってこと。軍港の角打ちってだけで、これはたまらない。
立ち呑みには軽めのロングコートと決めていた。トレンチコートの原型と言われるタイロッケンコートはフランスのワークコートでビンテージだ。
足元はイタリア海軍のスニーカーを生産していたスペルガのスニーカー。ビンテージではなく現行モデルのオールホワイトだ。軍港で飲む時は、やはりこいつがしっくりくる。
外から店内がほとんど見えない縦長の白い暖簾を潜ると、なんとも美しく長いカウンターが現れる。もうこれだけでグッとくる。
諸事情で今日は12:00開店だが、客は俺だけだ。こんな貸し切り状態も数分で終わるだろう。常連の皆さまに迷惑をかけてはいけない。
俺なりのルールがあり、立ち呑みではじめての店は出来るだけ入り口にポジションをとる。まずはこいつで乾いた喉を潤す至福の時。
ィヨコスカンな「赤星」がしみるぜ。なんとも言えない軍港の男くさいグルーヴにも酔っていると開店数分で常連らしき雰囲気のある男が数人入店してきた。みんな1人呑みで微妙な距離を開けて奥のカウンターでポジションをとっている。この緊張感がたまらない。
角打ちではまずテーブルに2,000円置くべし。キャッシュオンデリバリーなので、まずは440円を払う。
基本の缶詰を見ながら、つまみを考えるのが楽しい。
酒屋なので、酒はもちろんのこと簡単なつまみもあるぞ。
俺は角打ちでは滞在30分と決めている。ここは1時間ルールだな。おっと、ホワイトボードの旬系も忘れてはいけない。どれにするか悩んだ時は、まず常連が最初に頼んでいるものをチェックだ。
全員がつまんでいたのが春キャベツということでまずはこいつを。200円なので残りは1,360円だ。
妙にウマいぞ。完全に春気絶! これは間違いない。まずは野菜からがやはり基本だ。
おすすめのおでんもいってみる。310円なので残りは1,050円だ。
おでんもイイネ〜優しい出汁とシンプルなネタがたまらない。ほろ酔いで、少し場の雰囲気にも慣れてきたが、油断してはいけない。常連と心地よい距離感を保つのだ。カウンターは営業開始30分でほぼ満席だ。
気になったシュウマイもつまんでみる。あたたかいし、これくらいの小さいサイズが妙にウマい。215円なので残りは835円だ。
しかし「赤星」がウマすぎる。独特な軍港の男くさいグルーヴが俺を包み込む。
ちょうど1,165円使ったのでまだ呑めるが、長居は禁物だ。最後に隣にいた常連の男性2人とも軍港ならではの深いマジ話ができたし。もう少しここで呑みたいくらいだが、グッと気持ちを押さえ、店を出るのがちょうどいいもの。ほどよい緊張感の中で酔える素晴らしい角打ちだった。さてと、若松マーケットのスナックにでもよってもう少しィヨコスカングルーヴに酔ってみるかな。
ビンテージのタイロッケンコート。トレンチコートの原型でフランスはリヨンのアドルフラフォン社製のもの。ウェストのベルトを回して留めるディテールが特徴のワークコートだ。ちなみに酔ってくるとこのベルトが面倒臭いが、それも逆に悪酔いしないから有りだ。ブルーのものが多い中、このベージュは希少で気に入って愛用している。
Text:Eiji Katano
Photo:Shimpei Suzuki