赤星探偵団初の大阪で散歩した男ということで、DEEPな立ち飲み屋が連なる京橋エリアへ向かった。その前に大阪といえばここ。
道頓堀でグリコポーズではなくアニ立ち! 男はどんな時もブレてはいけないのだ。東京で生まれた男として油断してはいけない。
カニが俺に話しかけるが、俺が向かうのはもっとDEEPエリアだ。
江戸っ子の俺は、ここではよそ者だ。くいだおれ太郎に挨拶を済ませ散歩をつづけよう。
地方ロケや旅行で活躍するのがこのサコッシュだ。フランス軍のブレッドバッグでビンテージだが、サイズ感がちょうど良く、とにかく使い勝手がイイネ。
足元のニューバランス993は、どれだけ歩いても快適すぎる旅の相棒だ。
京橋の立ち飲み「岡室酒店直売所」は、平日の昼間とは思えない盛り上がりだ。都内でもここまでグルーヴが出まくっている立ち飲みは少ない。アウェイで、しかもはじめての酒場は最初が肝心だ。油断するな!
まずはこいつで落ちつけ。真夏の大阪で喉がカラカラだ。
最&高すぎる! 全てが東京とは違うぞ。しかし興奮して自分を見失ってはいけない。つまり浅い気絶でいいのだ。
店内は完全にライブハウスのような熱気に包まれている。もう一度言うが、平日の昼過ぎでこのグルーヴはパねえ。
だんだん大阪の空気がわかってきたぞ。オーナーの岡室さん前のベスポジを確保して常連達を観察する。
まだ話しかけるのは早い。しかし話したくて我慢できない。おっと、つまみを注文しなければ。
店内の壁面は品書きだらけで完全にカオスだ。そんな時は、無理せずに岡室の名物盛り合わせにしよう。しかし強烈に、スヤい!
新鮮お造り盛り合わせ500円! 鮮度も抜群で衝撃のクオリティだ。立ち飲みレベルをはるかに超えている。
ウマすぎる! と唸っていたら、俺が最初からレジェンドに違いないと思っていた左の白いキャップのお父さんがマシンガンのように話しかけてきた。世界中を旅した話だけで俺は大阪気絶の向こう側へ。「赤星」の取材だと話すとすぐに「赤星」をみんな注文してくれる。これが大阪グルーヴか。
串焼き盛り合わせ5本で300円!マジか?スヤすぎる。1本60円って大阪万歳!
もう完全にカメラを忘れている。いやロケということも、俺の中では超越してきた。そうこれは撮影ではなくアニ散歩だから、それでいいのだ。全て大阪で飲む「赤星」がウマすぎるせいだ。
カウンター越しの方も「赤星」を注文してくれた。大阪やっぱ好きやねん。
もうここからは、これが美味いよとか、これ食べなとか、さっき会ったばかりなのに隣の常連達がつまみをくれる状態に。俺はこの気絶の向こう側から生還できるのだろうか?
白いキャップのお父さんは、ずっと俺のことをディレクターと呼んでいる。旅の話は終わらないし、楽しすぎる。もうアニキとかどうでもよくなってきた。俺の右にいる黒いハットのお父さんともじっくりとシリアスな立ち飲みトークをした。昭和20年、終戦の前日にあった大阪大空襲を鎮魂する佛様が京橋駅近くにあるとのこと。より多くの方に知ってもらう活動を1人で今も行なっているらしい。なんかグッときた。楽しい話から、忘れてはいけない話まで、よそ者の俺を優しく酔わせてくれる。
突然、岡室さんのクイズ大会がはじまった。マニアックな洋楽ネタ、映画ネタとかスポーツネタまで、お客全員が回答して笑い、楽しんでいる。カウンターの中がステージのようだ。
とうとう店の「赤星」が全て売り切れになってしまい、そろそろ〆かなと思いながら、ずっと目の前にある、おでんが気になっていた。
ラストに天ぷら盛り合わせ300円を注文していたので、名物のおでん出汁かけにしてみると、強烈にウマい!大阪気絶……岡室昇天! 最&高すぎる昼立ち飲みだ。
オーナーの岡室さんの実家は酒屋で28歳の時に、脱サラしてこの立ち飲み屋をはじめた。ちなみに黒いハットのお父さんはその頃からの常連だ。常にお客を楽しませ、注文や店のオペレーションも完全にコントロールしている司令塔のような存在だ。朝9時から営業しているここで、朝も昼も夜も癒されている大阪人が心から羨ましいと思った。
フランス軍のブレッドバッグ。ビンテージのデッドストックを購入して愛用している。独特の生地感で使い込むほどに味が出る名品だ。このブラウンだけでなく他の色も存在するらしい。スマホや財布など最低限の荷物からMacBook Airまで入る絶妙なサイズも使い勝手がいい。
Text:Eiji Katano
Photo:Shimpei Suzuki